有機米が環境メッセージを発信 | 高級短粒種「ルナ・コシヒカリ」

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約30年前、ウェンディ・ツジさんは農薬で健康を害している農場労働者のニュースを読んで愕然とし、自分の食生活が与える生態学的影響を抑えようと決意、オーガニック食品を愛好するようになった。それから時が経ち、カリフォルニアで有機栽培されている米がごくわずかであることを知ったツジさんは、農業の経験がないにもかかわらずこの分野に飛び込んだ。持続可能性と生態系の健全性を促進するという使命感は、高級短粒種の有機米ブランド「ルナ・コシヒカリ」を作り出す原動力となった。

 ツジさんはハワイ州のオアフ島のビーチでおむすびを食べ、祖母と漬物を作り、母親から食の大切さを教わって育った。ハワイ大学マノア校で美術を、その後カリフォルニア大学バークレー校大学院で建築を学んだ。1980年代初頭、サンフランシスコで設計事務所を設立し、レストランの内装をデザインする機会にも恵まれ、環境に配慮した建築を手がけた。食文化に深く関わり、後にサンフランシスコの高級居酒屋「リンタロウ」を立ち上げたシルヴァン・ミシマ・ブラケットの下で料理の腕を磨き、頻繁に訪日しダイニングスペースのプランニング、家具の選定から調味料の製造まで、インスピレーションを得た。

 2021年、ツジさんは米に関する徹底的な研究を開始し、インターネットで膨大な時間を費やし、大量の味覚テストを行い、ビュート郡にあるカリフォルニア米試験場のスタッフと協議した。

 有機栽培が最も容易な米の種類はバスマティとジャスミンで、どちらも長粒種のインディカ種だが、ツジさんは短粒種のジャポニカ種を使いたいと考え、最終的にコシヒカリを採用した。コシヒカリは現在では日本の市場を席巻しているが、茎が細く背が高く、頭が重いため、収穫は特に難しい。それでも有機栽培を厭わない農家を見つけ、85パーセントの太陽エネルギーで運営されている良心的な小規模精米所「ファー・ウエスト・ライス」に精米を手配した。同社は収穫したコシヒカリを乾燥させるために熱を使うことを避け、コシヒカリの甘い風味と乳白色を保っている。月を連想させる色合いからルナと名付けられた。

 2022年、サクラメント・バレーでの初収穫後、ルナ・コシヒカリは瞬く間に舌の肥えた人々の間で高い評価を得た。ヒールズバーグの「シングルスレッド」、サンフランシスコの「ニセイ」など名だたるレストランで提供され、バークレーの「トーキョー・フィッシュ・マーケット」「バークレーボウル」、オークランドの「ウマミマート」などのマーケットにも並ぶようになった。

 知名度の獲得は重要な功績だが、ツジさんにとって商品の人気は環境へのメッセージを広めるという、より切実な使命を果たしている。「私はミシュラン・レストランのために米を作ることに興味があるわけではありません。ミシュラン・レストランの多くは、持続可能な製品を必要としている人々の手に届けるという点で、食のリーダーなのです」

 ルナ・コシヒカリとその背景にあるグリーン・イデオロギーをより広く普及させるため、ツジさんはレストランのスタッフに、ルナ・コシヒカリの生産がいかに生態系の健全性を支えているかについて「ミニ講義」をしている。高級レストランには権力者が集まる傾向があるため、スタッフがそのメッセージを影響力のある食通に伝えてくれることを期待し、やがて学校や病院のような日常的な空間にまで波及することを望んでいる。

 ツジさんは自分が世界を救っているという幻想は抱いていない。しかし、自分の努力が変化をもたらし、より広範なフード・アクティビズムに貢献できると信じている。「誰もが自分の役割を果たさなければならないと思います」。それには地球のために自分の食生活を見直すことも含まれる。「あなたが信じるものを食べるべきです」

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